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ふつう子供のある家庭では、親は休暇を子供の夏休みに合わせて5週間とり、あと子供が8歳まででしたら、育児有給休暇をコンビネーションしますから、悠に2か月はとれるわけです。
日常の生活では子供が小さければ、日本の家庭よりずっと親子の過ごす時間は長くなります。男親の残業はないし、週末も子供と一緒に過ごしますから。こうして子供のときから親子関係が親密だから、大人になっても会いたいときに会うことがふつうで、別に一緒に住まなくてもいいんですね。それに、一緒に住むとなると、やはり世代間のギャップとかありますから難しいです。
樋口 その辺の割り切り方が、文化の違いといってしまえばそれまでですが、日本と違うんですね。日本では、親子が一緒にずっと暮らしてくれば、この先もずーっと暮らしたいと思うわけですね。スウェーデンの人が、それだけよい親子関係を築いていながら、それをスパッと断ち切って出ていくのが、

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現象としてはわかるんですが、内面の意識として、私はなかなかわからないところがあります。
訓覇 それは、スウェーデン人が「自立」ということに非常に重きを置いているからでしょうね。自分の子供であろうと親であろうと、だれにも依存したくないのです。それぞれが自立した上で、一緒にいられる部分を共有しようということです。日本のように、好きだから、じゃあずっと一緒にいたいではなくて、好きだけれど、自分は自分で独立した自分であることが、基本なんです。

 

「結婚」「離婚」を取り巻く環境の違い

樋口 昔、ある先生がスウェーデン視察から帰ってきて、スウェーデンは非嫡出の比率が高い、スウェーデンは性が乱れているからだ、とおっしゃるのを聞いたことがあります。いわゆる「フリーセックス神話」ですが、実際にはスウェーデンの結婚は、どのようなものなのでしょうか。結婚は早いのですか。
訓覇 「結婚」は遅いですね。ただし、パートナーを作って同居に入るのは早い。カップルを作り始めるのは20代初めです。その代わり2,3の同居を経てから、結婚という形態に入りますから、結婚する年齢自体は遅くなります。
樋口 このシリーズの第一回に、人口問題研究所長の阿蘇誠さんをお迎えしたんですが、その時、今日本は大シングル時代に入ったというお話がありました。統計上はスウェーデンも平均初婚年齢が高いけれど、結婚形態が日本と違い非婚同居があって、それなりにパートナーシップを作っていると。日本のように、同居もしていない、結婚もしていない、子供も持たないという正真正銘一人の非婚化は珍しいという話になりましたが、やはりそういうことでしょうか
訓覇 そうですね。こちらに来て、スウェーデンの同居というのが、日本でいわれていたどこかいやらしい「同棲」というイメージではなく、パートナーを見付けた「同居」で、一緒に暮らしていけるかどうかをきちんと確かめていくプロセスとして、非常に健康的に見えましたね。日本で言われていた「フリーセックス」というのが神話だと思った最初です。非常に性が真面目で健康的、理論的すぎるぐらい真面目です。
樋口 考えようによっては、日本より男女が異性としてまっとうに機能しているわけですね。
訓覇 それに非婚同居(事実婚)で子供を作っても、女性も子供も差別されないことも新鮮でした。法的に全く差別がありませんから、それがとても増えてきています。60年代から70年代にかけて増え、現在では第一子の60%ぐらいは非婚の母親から生まれています。
樋口 スウエーデンは離婚は多いですか。
訓覇 離婚が昔に比べて増えているのは、ヨーロッパ先進国に共通なことです。離婚がどの時期に多い

 

 

 

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